伊勢大神楽講社 山本勘太夫社中運営部では、伊勢国(三重県)内で伝承されている各地の獅子神楽の調査を行っている。
この度は、2月11日 三重県鈴鹿市“椿大神社”にて行われた椿宮獅子御祈祷神事を取材させて頂いたので、本記事にてご報告させて頂きます。
450年以上の歴史を持つ伊勢大神楽講社では、永きに渡り伊勢国を越え竈祓いによる諸国巡礼の旅を続けている。
寛政9年(1797年)に発行された古文書“伊勢参宮名所図会”には「代神楽獅子舞6組出づる。諸国竈祓いをなす」とあり、伊勢大神楽が伊勢国(三重県)を越え諸国で竈祓いの旅を行う主旨の記述から近世には既に現代と変わらぬ伊勢大神楽の姿が形成されていた事を確認できる。
しかし、現在お膝元である三重県北勢部では伊勢大神楽の活動は数える程しか行なわれておらず、それも桑名市内での活動に限られている。伊勢国(三重県)では、古来より獅子頭には疫病や飢餓を祓う悪魔除けの力があると信仰されており、中世には伊勢国の各地の祭礼で獅子神楽による門付が行われていたと考えられている。
伊勢国の獅子神楽を代表し諸国を旅する筈の伊勢大神楽が、なぜお膝元である三重県北勢部での活動を行わないのか?
一説には三重県鈴鹿市の椿宮獅子舞御祈祷神事の存在があったのではないかと言われる。
椿宮獅子舞御祈祷神事は、約1300年前、聖武天皇が当地のツバキの大木で彫らせた獅子頭と神面を奉納、祈願したところ泰平の世が訪れたという言い伝えから、丑、辰、未、戌年の3年ごとの舞年に行うようになり、2月から4月まで鈴鹿市・四日市市・愛知県蒲郡市など各地で巡舞する。
古来より四日市や鈴鹿での伊勢大神楽の活動が確認されず、伊勢国内での活動が亀山より南に限定されていた理由の一つと考えられている。
三重県北勢部に広く伝承される獅子神楽は「四山の獅子神楽」の系統と伝えられ、その発祥は鈴鹿市に伝わる箕田流、山本流、中戸流、稲生流の四流派から成ると言われる。その一つ山本流の発祥が椿大神社である。
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△椿大神社の獅子舞と伊勢大神楽それぞれの“舞”
昨年秋には四日市市で行なわれた“大四日市まつり”にて四日市内各町に伝承された獅子舞を調査へ出向き、本年はその本流となる山本流発祥の椿大神社の椿宮獅子舞御祈祷神事を調査させて頂いた。伊勢大神楽の舞型の一部と四山の獅子神楽の舞型に明確な共通性が確認でき、古来非常に近い存在の獅子神楽であったことは現在の形からも伺い知ることができる。今後も、三重県下の獅子神楽調査を継続し伊勢大神楽の起源・成立に至る研究を進めていく。
調査:山本勘太夫社中運営部
調査協力;椿大神社