波太神社総舞は本年で奉納10度目となります。
神社の年中行事や阪南市の公認催事となるなど、これまで確かな歩みを進めてきました。
節目の10周年を記念し新たな総舞みやげの販売や、子獅子の神楽体験など様々な試みがなされ奉納開始前から賑わいをみせました。
いよいよ総舞の開始を告げる寄席太鼓が境内に響きます。
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△【10周年記念特別奉納】劔の舞・神来舞”山本勘太夫流”四段
三頭舞(舞手:山本勘太夫・山本八太・山本大貴)
総舞の開始に先だって10周年記念の特別奉納として大変希少な神来舞の三頭舞を披露致しました。
本来一頭舞・二頭舞を基本とする神来舞という演目において滅多と披露される事はありません。二社中以上が合同で奉納する場合など大規模な奉納時に企画される特別な神楽です。
たくさんの大神楽師見習いを育成し大所帯となった山本勘太夫社中ならではの奉納となりました。
△鈴の舞(舞手:山本八太)
△扇の舞(舞手:山本勘太夫/ 猿田彦役:大神楽師見習いN)
昨年までと演者を総入れ替えし、昨季入門の大神楽師見習いNと山本勘太夫という新たな組み合わせで構築し直した扇の舞です。南勢流と言われる旧石川源太夫や山城修社中などの古式の手を節目の今季に学び直しました。見習いも古参も共に学ぶのが山本勘太夫流です。
舞手の見習い曰く「面がズレていなければもう少し跳べました!」
..伸びしろと面のズレ幅に今後も要注目の若手です。
△綾採りの曲(放下師:山本春太夫 道化師:山本勘太夫)
波太総舞において放下師として先陣を切るのはこの方以外にありません。地元阪南市出身の大神楽師、山本春太夫(本名:指吸長春)です。本年16年目のベテランとなり新弟子の育成や本部役員として文化財の普及活動にも力を入れるなど多忙を極めますが、地元氏神での節目の奉納に照準を合わせ、しっかりと仕上げてきたようです。顔色は常に悪いですが芸は常に好調です。
△水の曲“半水”(放下師:大神楽師見習いS 道化師:山本勘太夫)
水の曲の前半部は”半水”と呼ばれ大神楽における放下芸の基本動作と技で構成されます。本年は6年ぶりに昨年入門の大神楽師見習いSが務めました。大学在学中から学生入門を認められた新弟子は山本勘太夫・山本八太に続きこの20年で3人目です。年内に大神楽師としての認可を、そして将来は八舞八曲を修める放下師を目指して修行中です。
今後450年、並ぶものは現れないであろう大神楽史上最高の学歴を持つ彼に乞うご期待!?
△水の曲“皿の曲”(放下師:山本春太夫 道化師:山本勘太夫)
△水の曲”皿の曲~枠皿・鯛釣り~”(放下師:山本勘太夫)
枠皿・鯛釣りも昔は、『奉納時間の長い総舞の中で放下師(芸者)に小休止を取らせたり、衣装替えの時間を設ける』ために道化師役が披露する放下芸として重宝されていましたが、近年は披露していませんでした。10周年記念にあたり、道化師で登場した山本勘太夫が実演。
しかし奉納中、誰一人小休止せず、誰も着替えていないのはご愛敬。
天高く突き上げた割れ物茶碗や徳利を、小さな木の台座で受ける”突き上げ”です。
無事に乗れば良いのだが..
写真で見ると恰好良いのだが…
今年は全く乗りません。
道化師にちくちく失敗を弄られています。
道化師が放下師を弄っているようで、実際は観客の代弁者になっているという構図が伊勢大神楽の萬歳(漫才)のひとつの形です。
△水の曲“突き上げ”(放下師:山本八太 道化師:山本勘太夫)
△神来舞“南勢 伊藤森蔵流”(舞手:山本春太夫・山本大貴)
本年も伊藤森蔵流を奉納致しました。かつて泉州で大変な人気を誇った伊藤森蔵流の神来舞を約30年ぶりに復活させて早8年。今年は数年ぶりに修得者が現れるなど、既に復活第一世代から次世代への伝承が始まっています。新たな舞手による魅力・味が生まれてくるのが神来舞の魅力です。
△劔三番叟(放下師:山本八太 道化師:山本勘太夫)
初奉納以来9年連続で演じてきた山本勘太夫から松下雄陽に演者を交代して奉納された劔三番叟です。
△魁曲
先発(上乗:山本春太夫・山本八太) 後発(上乗:山本大貴/台師:山本勘太夫)
これまで5周年記念の奉納以降、二頭立ての花魁道中の奉納を続けてきました。長年師の引退や後継者不足が重なり近年は苦しい旅が続いていましたが、必ずここでは二頭立てを披露するのだという気概をもって皆が団結し、長い時間を掛けて技を磨いてきました。
節目の年ではありますが、今年も無事に奉納できたことを感謝致します。
終了後は子獅子体験が大人気。
総舞みやげ(団扇)も大人気。
「昔は神楽が来るのが楽しみだった。獅子舞も楽しみだったけど親に小遣い貰って出店でみやげ買って..」そんな昔話を旅の中で何度もお年寄りから聞いてきました。神楽だけではなく、総舞が実践される空間が少しずつ昔の姿に戻っていく。
文化財の保存とは過去と向き合い、今を生きるこども達へと記憶のバトンを渡し続けていく事なのだと思います。
来年7月末、また波太神社総舞にて皆様とお出逢いできるのを楽しみにしております。
11年目も乞うご期待下さい。
山本勘太夫