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2024.07.30

7月27日 大阪府阪南市 波太神社総舞のご報告

7月27日、大阪府阪南市大阪府阪南市 波太神社にて総舞を奉納致しました。

本年で波太神社総舞は11年目の奉納。そして2年目より神社主催の年中行事として祭行している事から、本年は祭事成立10周年記念年となりました。

 

 

今では地域の皆様の力添えに加え阪南市や商工会の広報協力を受け、総舞みやげの販売所も賑やかな品揃えになるなど当初よりかなりのパワーアップ。11年の歳月を掛け少しずつ変化を加えながら長らく奉納を続けています。

 

 

波太神社総舞 これまでの歩み

△奉納1年目2014年度の様子です。まさに過密!境内の半分が解放されておらず、客席数が少なかったため舞台周りに人が密集して混雑しています。記念すべき初年度の奉納に参加した9名の内、現在も現役で参加しているのは山本勘太夫・春太夫・明一の3名のみとなりました。

 

 

 

△2018年度奉納では総舞みやげが初登場。まだまだ協賛が少なかった当時、夏祭に露店を造り若い祭りに華を添えるために「総舞みやげ」企画が始まりましたが、奉納直前に岡山県東部に西日本豪雨が発生し甚大な被害となります。急遽、みやげもの販売から義援金寄付のための企画へと変わり、同年8月にみやげもの売り上げ約15万円全額が岡山県岡山市・瀬戸内市・赤磐市の5つの自治体に寄付されました。

 

 

△2018年度の五周年記念奉納の様子。加藤菊太夫社中が参加したことで2頭立ての魁曲が

初披露されます。

 

 

△2020年 新型コロナウィルス対策により初の総舞中止、神楽奉納となりました。

 

そして本年の奉納。

古式に則りご祭神への鈴の舞から始まります。

△開始前奉納演目 鈴の舞(舞手:加藤難波)

一般の神事における禊祓い、祓詞に該当する最初の儀式舞。

舞手は、加藤菊太夫社中より参加の加藤難波です。見習い時代の修行先が山本勘太夫社中だった縁があり、これまでも泉州回檀にたびたび参加しています。

 

 

△山本春太夫襲名特別記念奉納演目“神来舞【南勢 旧伊藤森蔵流八段】”(舞手:山本春太夫)

阪南市出身の大神楽師である指吸長春が、昨年12月23日に山本春太夫を襲名し初の地元お披露目です。自身の故郷への襲名披露に選んだ一演目は『神来舞』です。先代直伝の山本勘太流ではなく、自身が幼少期に泉州一円を巡行した旧伊藤森蔵社中の流派を奉納します。

 

 

     

△劔の舞・四方の舞(舞手:山本大貴・山本真之介/ 猿田彦:山本笙)

 

 

       

△綾採りの曲(放下師:山本八太/道化師:山本勘太夫)

 

 

       

△水の曲“半水”(放下師:加藤元春/道化師:山本勘太夫)

加藤菊太夫社中所属の加藤元春です。かつては山本八太らと共に、2016年に勘太夫社中へ入門しNHKBSプレミアム『疾走!神楽男子』の被写体として認知された世代でしたが、見習い期間のみを過ごし当時は大神楽師になる事はできませんでした。令和4年度より加藤菊太夫社中へ新弟子として再入門し、無事に大神楽師の認可を受けて活動しています。菊太夫社中の未来を担う放下師として大きく期待されています。

 

 

        

△水の曲“皿の曲”(放下師:山本八太/道化師:山本勘太夫)

山本勘太夫社中の年間の地方巡行においては、数百を数える放下芸の奉納機会があります。その中で近年最も登場機会が多い放下師が山本八太です。学生入門者で9年目の三十歳は大神楽師として最も脂の乗った年齢です。若手大神楽師の躍進が著しい伊勢大神楽講社において象徴たる活躍を続けています。尚、萬歳(話芸)の方は不得意なご様子。今後の成長(改善?)を御見守り下さい。

 

 

                      

△手毬の曲(放下師:山本春太夫/道化師:山本大貴)

この度が襲名披露となる春太夫は手毬の曲で登場致しました。手毬の曲は伊勢大神楽八舞八曲十六演目において、至極の放下芸として伝わり、修得に要する難易度・時間などから滅多と伝承する者が現れず2010年に若手大神楽師の山本真也(現勘太夫)が28年ぶりに修得者となるまで、長らく途絶えていた演目です。現在は修得者の二名の衰えもあり、以前ほど盛んに披露する事はなくなっています。しかし、奉納を続けていくことで次の世代に繋いでいくという役目もあり、節目に合わせこの日は若手道化師の山本大貴との掛け合いで奉納を行いました。

 

 

 

△なんだかフワフワした可愛らしい放下師が登場。東京大学大学院在学中に学生入門で伊勢大神楽の見習いとなった異色の経歴を持つ山本真之介です。令和4年2月入門ながら学業の方が多忙だった事もあり実労はまだ一年半。しかしあっという間の早さでここまでやってきました。なんと本日が『献燈燈の曲』初披露(初挑戦)です。もしこの日に献燈の曲を成功させることができれば、石川源太夫(かつては勘太夫社中所属)・山本勘太夫・山本春太夫・山本八太らを抜き社中の近代史で史上最速となります。

皆がはらはらドキドキ行く末を見守ります。

 

  

△献燈の曲(放下師:山本真之介/道化師:山本勘太夫)

無事に全ての茶碗を継ぎ足してゆき献燈が完成しました。本来の3倍の奉納時間を要する大苦戦でしたが、無事に大役を果たしました。

春太夫曰く「今しか見ることができない稀少な姿」。引き続き精進していく事と思います。

考え方を変えてみるならば、稀に若手が登場することで、毎年平穏に観ている伊勢大神楽の放下芸が実際は危険を伴うものだと皆様に伝える事ができます。若手は未熟な姿のままで成長して貰わない方がベテランたちは..自身の格上げになりお得かもしれません。

引き続きベテランの引立役になるのか、一人前の放下師として自信と共に帰ってくるのか、再会を楽しみにお待ち頂けましたら幸いです。

 

 

  

△神来舞“ 山本勘太流 参段”(舞手:山本大貴・山本笙)

伊勢大神楽の象徴的演目 神来舞です。若手が二名以上揃うと“世代”ができると昔から言われます。無形民俗文化財である形なき文化財継承の世界においては、一個人の意見ではなく、ひとつの世代の価値観として業界に広く受け入れられていく事は芸能文化に先々大きな変化をもたらしていく事と同義と言えます。

技術はまだ身に付いていませんが、獅子の粗さから垣間見える気持ちには既に粋を感じる事ができます。今後は如何に変化していくのか、無形文化財の腕の見せ所がここにもあります。

 

 

   

△劔三番叟(放下師:山本勘太夫)

閑話休題。お次はいよいよ花魁道中です。

 

 

         

先発(上乗:山本春太夫/台師:山本八太) 後発(上乗:山本大貴/台師:山本勘太夫)

総舞の締め括りは魁曲。波太神社で奉納する11度目の花魁道中です。

初年度は山本勘太夫と春太夫の二名による一頭立ての奉納からスタートしました。世代交代に伴いあらゆる組み合わせでの奉納が行われ現在はこの二組が主となっています。来年には現在の組み合わせを轟かす若手コンビが登場してくるかもしれません。今後の成長にご期待下さい。

 

 

終了後はちびっこファンからお手紙を頂いたり

 

 

恒例の頭噛みや記念撮影

 

 

そして総舞みやげの露店も大人気です。現在は通信販売も行われており、いつでも総舞みやげのお求めが可能になりましたが、やはりわたし達が見たかった景色は『祭りに露店。嬉しそうにおみやげをもって参道から帰る親子連れ』

少しずつ、昔ながらの総舞の風景の姿を取り戻しつつあります。

 

夏本番、暑さの厳しい時期の総舞でしたが大きな混乱なく無事に奉納させて頂くことができました。

本年もご参集の皆様方、誠にありがとう御座いました。

今後とも地元出身の太夫“山本春太夫”を郷土の誇りと感じて頂けるような一層の活躍、文化保全・継承活動に社中一同で邁進して参ります。引き続きのお力添えを何卒、宜しくお願い申し上げます。

 

 

山本勘太夫・山本春太夫