5月4日(金)大阪城にて行なわれました“戊辰戦争150年 大阪城ファミリーフェスティバル2018”にて総舞を奉納致しました。
ファミリーフェスティバルでは天守閣正面に特設ステージが設けられており、全国から招待された多くの神楽団・保存会が催しに参加しておりましたが、伊勢大神楽には筵が用意され、総舞本来の形で奉納させて頂きました。
奉納に先だって、大阪城天守閣館長である北川央さんによる芸能解説が行われ、伊勢大神楽に初めて触れる方々は特性の冊子を片手に熱心に聞き入っていました。
定刻となり、20年ぶりの大阪城下での総舞開始を告げる“寄席太鼓”が大阪城に鳴り響きます。伊勢大神楽講社は1999年にも大阪城にて総舞を奉納しており、その際は山本源太夫社中・加藤菊太夫社中・山本勘太夫社中・紀州支部山城修社中と四社中より編成された神楽団により“伊勢大神楽講社”として総舞を奉納致しましたが、この度は“現在最も勢いのある社中の一つ”としてご招待頂き、当社中のみで奉納に挑みました。
△鈴の舞(舞手:山本勘太夫・松下雄陽)
△四方の舞(舞手:山本勘太夫・松下雄陽)
△扇の舞(舞手:松下雄陽)
社中の若手大神楽師達も大阪城の舞台に立ちます。建部大社・隅田八幡神社総舞など多くの大舞台で奉納し磨いてきた扇の舞です。
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△綾採の曲(放下師:指吸長春/道化師:石崎雄一朗)
水の曲“半水”(放下師:松下雄陽/道化師:石崎雄一朗)
水の曲“長水”(放下師:山本勘太夫/道化師:石崎雄一朗)
△水の曲“突き上げ”(放下師:指吸長春/道化師:石崎雄一朗)
水の曲“戸板廻し”(放下師:山本勘太夫)
△水の曲“皿の曲”(放下師:指吸長春/道化師:石崎雄一朗)
水の曲“鯛釣り”(放下師:山本勘太夫)
△神来舞“正調 山本勘太夫流”(舞手:楠見晃・松下雄陽)
この度のイベントでは伊勢大神楽を代表する演目として神来舞を二度奉納致しました。明治30年~昭和46年に一時廃業を経験した当社中では再興にあたり、当時の大神楽師たちが宗家 源太夫流の神来舞を社中の神来舞として修得しました。しかし平成20年、先代勘太夫は当人の師匠にあたる佐々木金太夫氏(先々代)の神来舞を現代に復活させました。それが正調 山本勘太夫流です。
△手毬の曲(放下師:山本勘太夫/道化師:石崎雄一朗)
大神楽八曲の中でも至難の曲と言われる“手毬の曲”です。当日の大阪府は常時風速6Mを越える強風。更には大阪城特有の堀から吹き上げる強烈な風が天守閣麓で交錯し、快晴の空模様とは裏腹に暴風の様相を呈していました。
△献燈の曲(放下師:指吸長春/道化師:石崎雄一朗)
吹き荒れる強風の中で奉納された“献燈の曲”です。舞台裏ではあまりの強風に奉納の中止も検討されましたが、当社中番頭の指吸長春が執念の放下芸で演目を成立させ奉納が続行されました。
△傘の曲(放下師:山本勘太夫/道化師:石崎雄一朗)
大神楽らしい古典萬歳に定評がある演目“傘の曲”ですが、傘を開くだけで風に攫われるような強風という条件もあり、観客には萬歳の声がなかなか届きません。しかし殆どの観客が開始より100分以上も席を離れず演目を見守ります。
△神来舞“南勢 伊藤森蔵流”(舞手:指吸長春/石崎雄一朗)
三重県四日市市阿倉川村を発祥とする南勢流神来舞は、かつて大阪府下で広く愛されていました。1999年度、大阪城総舞では紀州支部山城修社中が“南勢 石川源太夫流”の神来舞を奉納しており、この度も20年の時を経て、太閤豊臣秀吉に再び南勢 伊藤森蔵流を奉納させて頂きました。
一日平均1万人以上の来場者が足を運ぶ大阪城において近年では3割近くが海外からの観光客です。日本の古典芸能の中でもエンターテイメントの要素が強い“DAIKAGURA”に海外よりのお客様も釘付けとなっていました。
△劔三番叟(放下師:山本勘太夫/道化師:石崎雄一朗)
△魁曲(上乗:指吸長春/台師:山本勘太夫)
総舞開始より130分を越え、一層の強風が吹き荒れる中で奉納された魁曲です。安全面での心配もあり奉納の可否が懸念されていた魁曲ですが、長らくのお付き合いを頂いたご参集の皆様に向け、危険を伴う大技を含む社中の持ち技全てを披露致しました。
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奉納終了後はインタビューも行われ、初めて伊勢大神楽に触れた多くのお客様に向け家元 山本勘太夫が簡単に社中の活動内容を報告致しました。
イベントの締めは総舞恒例の“頭噛みの御祓い”です。子供からお年寄りは勿論、海外のお客様まで初めての頭噛みに笑顔を浮かべていました。
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この度、歴史的とも言える大阪城下での総舞奉納が実現しました事、また伊勢大神楽講社を代表し平均年齢の若い当社中のみで、このような大規模なプロジェクトにおける責務を全うできた事、何よりも吹き荒れる強風の中、140分の総舞を見届けて下さいました運営の皆様、そして観客の皆様方。全てに心より感謝を申し上げます。社中一同、変わらぬ精進を続けると共に一層の自信を手に地方巡礼の旅を続けたいと思います。
家元 山本勘太夫