Rituals
獅子舞による御祓いShishi-mai
古来より伊勢の国(三重県)では、獅子頭には疫病や飢餓を祓う悪魔除けの力があると信じられてきました。 中世には伊勢の国の各地の祭りで獅子神楽によるお祓いが行われていたと考えられています。寛政9年(1797年)に発行された古文書"伊勢参宮名所図会"には「代神楽獅子舞六組出づる。諸国竈祓いをなす」との記述があり、近世には伊勢大神楽が三重県を出て他府県で竈祓いの旅を行っていた現在と変わらぬ形が成立していた事を伺い知ることができます。
竈祓いKamado-barai
伊勢大神楽のお祓い(御祈祷)は、古くから“竈祓い”と形容されます。竈祓いでは玄関より火伏せの祝詞を奏上し玄関口にて悪魔除けの獅子神楽を舞います。伊勢の大神楽師たちは江戸期に伊勢神宮祭主下神職の身分にあったため、神宮大麻の頒布を始めとした伊勢信仰の普及活動も役割としていましたが伊勢大神楽が古くから守り伝えてきたお祓いの主な役割は竈祓いにあります。
伊勢大神楽講社の神札Ofuda
伊勢大神楽講社では神楽大麻・伊勢大神楽護符・鎮火護符の三枚の神札を授与しています。神楽大麻は皇大神宮をお祀りする神札ですが各地の氏神様でお受けできる神宮大麻と異なり、直接神宮を参拝した場合のみ受ける事のできる授与大麻の一種です。かつては伊勢御師が地方に住む人々の代理参拝人として神宮にて御祓大麻を受け、神札には必ず御師の太夫名を明記して配布することが一般的でした。現在の伊勢大神楽講社の神札はかつての神楽大麻・御祓大麻の姿を現代に踏襲しており江戸期に栄えた御師制度の名残を現代に遺していると言えます。
楽祓Raku-barai
現代では地域と伊勢大神楽の関係性も多様化しています。かつては回檀でのみ神札を受ける事ができましたが情報網が発達した現代では、日本中どこからでも遠方で行われる総舞の日程を把握する事ができます。そのため毎年総舞に足を運び神札を受ける方の多くは、伊勢大神楽の活動圏外に住まうなど、近代ならではの師檀関係が築かれてきていると言えます、総舞でのみ神楽を受ける事を『楽祓(らくはらい)』と呼びます。”楽しみながら厄を祓う”の意です。
祈祷と御初穂料Hatsu-ho-ryo
一般に神社にて御祈祷を行う際と同様、神楽の奉納に際して御初穂料をお納めします。古来より日本では祭事の際には神様に農作物をお供えしており、初穂とは、その年に最初に収穫した農作物のことを指します。つまり「御初穂料」とは初穂の代わりとなる金銭のことを言います。また、祈祷に際してお納めする御初穂料の額に応じて奉納される神楽の種類・奉納時間が変化するのが一般的です。
御初穂料と奉納神楽の目安
・参仟円 獅子一頭による神楽
・伍仟円 獅子二頭による神楽
・壱萬円以上 獅子二頭による神楽/猿田彦(天狗)と獅子による神楽
※少額の御初穂料の場合でも上記と同様、金額に応じて神楽を奉納します。総舞の御初穂料など概要・詳細は別ページにてご確認下さい。